お米文化に変わるパン文化を広めたい la vie du reve(ラヴィデュレーヴ)愛知県岡崎市

創業136年の老舗が挑む 新ブランドの看板商品が誕生。 新たな客層との接点を生むパン。 BANKAKU KITCHEN
商品開発 冷凍生地 愛知県名古屋市
la vie du reve (ラヴィデュレーヴ)

BANKAKU KITCHEN

1889年(明治22年)創業。名古屋を代表するおみやげとして、今や全国区の知名度を誇る海老せんべいの「ゆかり」をはじめ、自然の恵みを生かしたお菓子を作り続ける「坂角総本舖」。海老と向き合い、探究心と創意工夫によっておいしい笑顔を広めてきた、いわば海老のプロフェッショナルです。

そんな老舗が、満を持して挑んだ新業態が「BANKAKU KITCHEN(バンカク キッチン)」です。若年層にも響く海老を使ったテイクアウトフードを提供する新ブランドとして、注目を集めています。

今回、ラヴィデュレーヴが商品開発に携わったのは、「BANKAKU KITCHEN」の看板商品として送り出された「〈焼き〉海老カレーパン」です。

創業から136年。“理想のおいしさを届け続ける”という揺るぎない信念を貫く老舗とラヴィデュレーヴのセッションにより、唯一無二のカレーパンが生まれるまでの道のりとは――。「BANKAKU KITCHEN」の事業担当である神野公人さんと、「坂角総本舖」の広報担当・山田弥生さんに、その歩みについてうかがいました。

海老と向き合い続けてきた歴史を
「BANKAKU KITCHEN」として表現。

― 「BANKAKU KITCHEN」というブランドを立ち上げた経緯を教えてください。

山田さん:海老せんべい一筋の「坂角総本舖」は、海老と向き合いながら歴史を刻んできました。せんべいには天然の海老のみを使用しているため、当然ながら環境や気候などの影響を受けます。自然素材ならではの難しさも多く、長きにわたって海老の特性やおいしさの秘密について常に研究を続けてきました。

そんな中、培ってきた海老に関する知識や技術をせんべい以外のカタチでも表現できないかという思いのもと、10年ほど前から社を挙げて思案を重ね、チャレンジを繰り返してきました。さまざまな試みを経て、ようやくお客さまに新ブランド「BANKAKU KITCHEN」としてお披露目できたのが2021年のこと。「ラシック」の催事として、海老を使ったカレーライスやカレーパンを期間限定で販売しました。

好評の声を受けて「ジェイアール名古屋タカシマ」でも年に数回、期間限定ショップとして出店。想像を遥かに超える反響をいただきました。


― 2024年10月には、テイクアウト店「BANKAKU KITCHEN」の実店舗が誕生しました。

山田さん:実店舗は、名古屋市東区の直営店・葵店を改装し、海老せんべい「坂角総本舖」とのハイブリッド店舗というスタイルでスタート。創業135周年という節目の年でもある2024年に、積み重ねてきたチャレンジをカタチにするという思いを込めて、新しい「坂角総本舖」の象徴として「BANKAKU KITCHEN」がオープンしました。

「BANKAKU KITCHEN」は海老カレーパン、海老カレー、海老コロッケなど、海老を使ったテイクアウトフードに特化。「坂角総本舖」としてのホスピタリティやブランドイメージを大切にしつつ、これまで接点の少なかった世代の方にも親しんでいただけるような商品ラインナップ、店舗デザインで打ち出しています。

海老カレーパンの改良を模索する中、
ラヴィデュパンとの出会いが転機に。

― 「BANKAKU KITCHEN」の実店舗をオープンするにあたり、一番力を入れたことは?

神野さん:フラッグシップ商品となるカレーパンの刷新です。催事やイベントでご提供していた従来のカレーパンも大勢の方にご支持いただいていたのですが、新ブランドの顔となるために、さらなる高みをめざす必要がありました。そこで課題となったのが油感です。食べ応えがありながらもライトな食感を出すために、油感を抑えた焼きカレーパンが実現できないかと考えていました。

ただ、生地を揚げずに焼くスタイルにすると、どうしても生地のパサつきを感じたり、コクが失われたり。マイナス面を払拭できずにいました。理想のカレーパンを求めて「おいしいカレーパンがある」と聞けば足を運び、旅行先や出張先などでカレーパンを見かければ必ず実食するなど、カレーパンの改良を模索する日々が続きました。そんな時、とあるイベントで出会ったのがラヴィデュパンのカレーパンだったのです。


―ラヴィデュパンの商品を食べた時の感想は?

神野さん:一口食べた感想はとにかく「おいしい!!」。イベントということもあり、焼きたてではない状態だったにもかかわらず、生地のパサつき感がまったくなく、もっちりとした食感。当社特製の海老カレーフィリングとの相性も良さそうという直感がありました。

ほかにもラヴィデュパンの商品をいくつか試食したところ、「坂角総本舖」というブランドイメージにも合うクオリティや上質感があり、「お客さまにもきっと喜んでいただける」という期待感で胸がいっぱいに。早速、ラヴィデュレーヴのウェブサイトで情報収集をしてみると、これまでの事例やオーナーの経歴、システム構築などさまざまな面で安心感が得られましたし、何よりもあふれんばかりのパンへの情熱が伝わってきて好感を抱きました。

ミニマムな設備と生産体制を可能にした
レーヴシステムの冷凍生地。

―ラヴィデュレーヴとの商品開発が始まって、感じられた印象は?

神野さん:初めて加藤さんとお会いしたのは、2023年の夏頃だったと思います。「おいしいものを作るためには妥協を許さない」という共通の熱い思いを感じましたし、こちらの要求に対して、絶対に「できない」と言わないプロ意識にはいつも感心させられますね。

1つ2つこちらから要望を伝えると、5つ6つとアイデアが出てくる引き出しの多さも加藤さんならでは。例えばカレーパンのフォルム。こんもり丸みを帯びた形状にしたいという私のイメージを叶えるために、さまざまな生地や製法で試作。焼きたてではない状態でも、生地のなめらかさを保ちつつ、イメージ通りのころんとしたかわいい見ためを実現してくださいました。



― もともと、せんべいなどの新商品の試作室として使っていた1室を、パン作りの厨房として改装されたそうですね。

神野さん:はい。葵店の8階にある1室を活用するため、粉のミキシングや捏ねの作業といった生地作りの工程から手がけることは想定していませんでした。そういった当社の事情と照らし合わせた時、レーヴシステムによる冷凍生地を使える点は大きなメリットでした。

厨房での作業は、板状の冷凍生地を解凍するところから。解凍した生地を切り分け、前日に成形して発酵庫へ。翌日、発酵状態を見ながら焼き上げます。

一晩かけて発酵させることでベストな状態になるように、ラヴィデュレーヴにて生地段階の配合などを調整していただいたおかげで、前日仕込みが可能になったことも生産体制の支えに。スタッフの業務負担を大幅に軽減することができました。



― 生産体制の構築や厨房のオペレーションに関する難しさはありましたか?

神野さん:これまでのイベント販売とは異なり、実店舗で販売していくにあたって私が一番重視したのは、安定したクオリティの商品を継続してご提供し続けていくための体制づくりです。

正直、おせんべい作りをしてきたスタッフがパン作りを担当することに、不安がなかったわけではありませんでした。その思いも加藤さんはしっかりと受け止め、誰が作っても安定した出来映えになるための体制や仕組みを考案。オーブンや発酵に用いるドウコンディショナーという機器選び、製造工程の時間配分など、きめ細やかにディレクションしていただきました。

初めてパン作りをする人や、パン専用の機器を扱うことに慣れていない人でも負担が少ないようにというスタッフの視点に立った提案のおかげで、懸念材料が次々とクリアに。ハードルの低い状態でスタートできました。

おいしさへの妥協なきチャレンジ。
試食、フィードバック、試作の繰り返し。

―商品開発のうえで苦労した点は?

神野さん:創業以来、おいしさへの妥協を許さないという姿勢を貫く当社では、試作品の試食会では必ずトップである社長も試食をします。今回のカレーパンについても、社内での試食会で承認を得られるまでに幾度もフィードバックを重ねて改善を加えていただきました。

開発が始まった時点では、実店舗オープンに先駆けて2024年6月に予定されていた「ジェイアール名古屋タカシマヤ」のイベントで新作のカレーパンをお披露目したいと考えていました。しかし試作・改良が続き、正直間に合わないのではないかと冷や冷やでしたね。試食会の前日、ぎりぎりのタイミングで完成した試作品を岡崎まで取りに行くこともありました。

最も難航したのは、生地の部分。いろいろな生地でサンプルを作っていただいた中から、国産小麦を使ったフォカッチャ生地が採用になったのですが、生地が決まった後も、イメージする食感や風味に到達するために何度も試食と試作の繰り返し。生地に加えるオリーブオイルの量や、最後にのせるパン粉の量など微調整を経て、満場一致で納得できる商品に仕上げていただきました。


―パン作りを手がける中で、おせんべい作りとの共通点や違いを感じた部分は?

神野さん:おせんべい作りも同じなのですが、パンも生きものだと痛感します。

お店のオープンが秋だったので、試作の追い込みをしていたのは夏真っ盛りでした。そのためオープン後、時が経つにつれて秋から冬へと気温が変化する中で、同じ機器、同じ設定であっても発酵具合や焼き上がりが変わってきているのです。

今後は、数値化したマニュアルの管理だけではなく、人の感覚や経験値を蓄積しながら、安定したクオリティを保っていく必要がある。そのためにも、オープン後も引き続き丁寧にフォローしてくださる加藤さんという伴走者がいることはとても心強いですね。

新たなお客さまとの出会いを育む、
パンが秘める可能性に期待。

―「坂角総本舖」の新たな顔として歩み始めた「BANKAKU KITCHEN」。今後の展望についてお聞かせください。

山田さん:パンというアイテムはワンハンドで気軽に食べられますし、新しい層のお客さまとの接点を生んでくれる商品として期待が膨らみます。今後も引き続きラインナップを増やしていきたいですね。

当社が大切にしている考え方のひとつである「不易流行」という言葉に象徴されるように、「変わらないおいしさを守るために、変化を続ける」。その姿勢は、「BANKAKU KITCHEN」も同じです。「坂角総本舖」の老舗としてのホスピタリティを大切にしながら、サプライズやワクワク感を届けられるよう、常に新しい試みにも挑んでいきたい。そして「BANKAKU KITCHEN」から生まれる、お客さまとの新たな出会い、おいしいもので紡ぐ笑顔の時間を育んでいきたいと思っています。

Shop Infomation

店舗情報

バンカク キッチン BANKAKU KITCHEN

海老せんべいの「ゆかり」で知られる「坂角総本舖」が、海老を使ったフードメニューのテイクアウト専門店としてオープン。名古屋市東区で30年以上親しまれてきた直営店の葵店を改装し、海老せんべいの「坂角総本舖」×「BANKAKU KITCHEN」のハイブリッド店舗に。海老や海をイメ―ジした店舗デザインなど、街に新たな表情を生んでいる。



名古屋市東区葵3-18-15 坂角 葵ビル1階
tel 052-938-6130
営業時間 9:00~19:00、土日祝は~18:00
HP https://www.bankaku.co.jp/

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