お米文化に変わるパン文化を広めたい la vie du reve(ラヴィデュレーヴ)愛知県岡崎市

やきものの里で出逢う パンと器の すてきな関係。 FLEURS FLEURS
商品開発 プロデュース ベーカリーショップ 岐阜県土岐市
la vie du reve (ラヴィデュレーヴ)

FLEURS FLEURS

陶磁器生産量日本一を誇る岐阜県土岐市。美濃焼のふるさとである土岐市北部に、陶磁器の商社が一堂に会する「織部ヒルズ」があります。

国道沿いにある道の駅「志野・織部」を起点にやきもの団地の中を巡ると、10数店舗のショップが点在し、やきもののみならずガラス製品やインテリア雑貨など、暮らしを豊かにするアイテムがそろいます。

そんな「織部ヒルズ」の一角にお目見えしたのが「フルール・フルール」です。1950年創業、土岐美濃焼卸商業団地(現在の織部ヒルズ)で1985年から器の商社を営む「イサジ」に、パン屋さんとしての新しい息吹が吹き込まれました。

店舗デザイン、ロゴデザイン、メニュー開発・製造支援、スタッフ指導など、ラヴィデュレーヴの代表・加藤大貴が、トータルプロデュースを担当。コンセプトは、和の文化に洋のエッセンスが加わり、見る見る華やかさを増していった「大正ロマン」です。

歴史の香りを色濃く伝えるタイル張りのレトロな外観に、なつかしさと新しさを感じさせる扉や照明のデザインが調和。ちょっぴりノスタルジーでハイカラな「フルール・フルール」のゴールドのロゴが目を引きます。

新たな時を刻み始めた、食器のショールーム・セレクトショップ「陶舎花*花」&パン屋さん「フルール・フルール」。このお店をお目当てに、開店時間を待ち望む人たちが連日列をつくり、織部ヒルズに新しい人の流れを生み出しています。

一瞬で記憶に深く刻まれた
ラヴィデュパン。
「パン屋さん」という夢が道を照らしてくれた。

― ラヴィデュレーヴのパンとの出会いについて、お聞かせください。

もともと、食器の商社として飲食店さまとの取引が核となっていました。そのためコロナ禍により、多くのお客さまが多大な影響を受け、必然的に弊社の飲食店さま向けの器販売も停滞していました。

そうした流れで「もう一つの、新たな柱となるチャレンジを」と模索していた時のことです。

仕事の都合で岡崎のとあるホテルに宿泊した時、朝食で提供されたトーストのおいしさに衝撃を受けました。思わず「どこのお店のパンですか?」とスタッフの方にたずねたところ、ラヴィデュパンの岡崎食パンだと教えてくださいました。

ホテルを後にして帰路につく前に、早速ラヴィデュパンに立ち寄ってみました。すると、細い路地の入り組んだ昔ながらの住宅街の一角に、突如フランスの風を感じるおしゃれなショップが建っていたのです。

平日にもかかわらず、たくさんのお客さまで賑わう店内。パンはどれも洗練されたフォルムで、見るからにおいしそう!お目当ての岡崎食パンをはじめ、ワクワクしながらパン選びを楽しみました。


― パン屋さんを開きたいと思ったきっかけについてお聞かせください。

ラヴィデュパンのおいしさが頭から離れず、帰宅後にお店のウェブサイトや口コミなどをチェックしていたところ、オーナーシェフの加藤さんがプロデュース業も手がけていることを知りました。

その時「これだ!!」という直感に突き動かされたのです。食器の販売に次ぐ新しい顔としてパン屋さんを始めれば、従業員の仕事を生むことができ、店にも町にも活気を取り戻せるのではないかと思いました。

今考えれば、パン屋さんの仕事を少し甘く見ていたのかもしれませんが、先行きが明るく照らされた感覚を覚えています。

翌朝、社長である主人に相談しようと思い、気持ちの高ぶりを抑えきれぬまま眠りにつきました。


― そこからパン屋さんの開業へ向けて、順調に進んだのでしょうか?

いえいえ。そんなことはないんですよ。晴れやかな気持ちで眠りについたものの、朝起きたらなんと、顔面神経麻痺を発症してしまっていて。当時、卸業の注文は激減していたものの、コロナ禍の巣ごもり需要により、私が一手に担当していたネット販売の方は多忙を極めていました。知らず知らずのうちに、その疲労が蓄積されていたのかもしれません。

神さまからの「止めておきなさい」というお告げなのかもしれないと思い、パン屋さんを始める夢に蓋をしたまま、仕事をセーブしながら身体を労わる日々が続きました。

それから1年ほど経ち、ようやく体調も元に戻りつつあった時のことです。知人から、コロナ禍からの回復をかけて新しい事業を立ち上げるという計画を聞き、刺激を受けた私の中に「パン屋を開きたい」という夢が、再び沸々と湧いてきたんです。


― 加藤さんとお話した時の印象や感覚は覚えていますか?

主人に相談し、とにかく加藤さんに会いに行こうと、連絡をして岡崎に向かいました。加藤さんのパンに対する情熱、作るパンに対する自信、それでいて他から得るエッセンスを柔軟に受け入れる謙虚さも感じて、すごく好感を抱きました。

ラヴィパンの生地に、
心尽くしのお手製フィリングで
当店らしい味わいを。

― いよいよ念願のパン屋さんオープンに向けての歩みが始まったのですね。

私は趣味でパン作りを楽しんでいる程度でしたので、何もかもわからないことだらけ。最初の壁は、パン職人探しでした。異業種からの開業のため、当然ながら職人を探す伝手もなく、行き詰っていました。

そんな時、加藤さんがブレーンを駆使して、意欲があり信頼のおける今のシェフを紹介してくださったんです。経歴も人柄も申し分ありませんでした。

正式にシェフの入社が決まってからは、加藤さんが商品開発を手がける名古屋のツルマ ガーデンにオープンした「いちごパン」のオープニングスタッフとして研修をスタート。パン作りはもちろん新店オープンまでのステップや店づくりのノウハウ、サービス面など、加藤さん直伝であらゆる極意を吸収してきました。


― 「フルール・フルール」という店名の由来は?

もともと営んでいた器ショップの「陶舎花*花」という店名に合わせて、フランス語で花を表す「フルール」を店名にと加藤さんが考えてくださいました。素敵な名前に合わせて、店先や店内の随所に花をあしらい、訪れる方の気持ちが豊かになるようなおもてなしを心がけています。


― 商品コンセプトは、どのように決まっていったのでしょうか?

開店に向けて、まずはすべての基本となるパン生地を加藤さんが考案してくださり、それに合うアレンジについていろいろなアイデアをいただきました。

食事パン系はボリューム感があり、満足度の高いメニューを中心に。スイーツ系は小ぶりで華やかさのある上品な仕上がりに。

加藤さんは、パン作りに関して素人の私が的外れの意見や希望、質問を投げかけても、わかりやすく丁寧に説明し、導いてくださる先導者のような方。依頼人の言いなりになるのではなく、軌道修正しながら最善の道へと調整してくださる手腕に感心しています。

― おすすめの商品について教えてください。

看板メニューは、小麦の甘み、もちもち食感がクセになる土岐食パンです。そこに、心尽くしのお手製フィリングで、当店らしい味わいを追求したクリームパン、あんぱん、カレーパンなど20種類ほどが並びます。

お店の名前にちなみ、花のブーケをモチーフにしたクロワッサン・フルールも評判です。定番のクロワッサンとは生地の層が異なり、食感やバターが香る広がりの違いを楽しめるので、食べ比べをされるリピーターの方もいらっしゃいます。

加藤さん秘伝の定番パンに加えて、パン職人である店長が気まぐれで出す限定パンにも、ぜひ注目してください。

まだメニュー入りしていませんが、私が以前から作ってみたいと思っていたちくわパンや、近所の人気精肉店のコロッケを使ったコロッケパン、ゲランドの塩を使ったパンなども考案中です。

オープン当初は厨房やスタッフのオペレーションのことも考慮し、ラインナップ数を絞り込んでいますが、店長や私が作りたいと思うメニューについても、いつか実現できるようにと加藤さんは意向をしっかりくみとってくださいます。

ラヴィデュパンの生地だからこそ、合わせるものを選ばず、揺るぎないおいしさが出せます。いろんな挑戦ができそうなので、これからが楽しみです。

パンや器を介して生まれる会話を大切に、
気持ちが豊かになるような場所でありたい。

― オープンを迎えられた時はどのようなお気持ちでしたか?

オープンが近づくにつれ、「お客さまが本当に来てくれるだろうか」、「満足していただけるだろうか」と緊張感が日に日に高まっていきました。

でも、グランドオープンの前にレセプションを開いたことが大きな糧になりました。加藤さんのご提案で、開催へ向けてすべて段取りをしてくださって。ご近所の方ややきもの業界の知人、親類などを招いてレセプションを行ったのですが、このプレオープンを経験していなかったらどうなっていたんだろうと怖くなりますね。

厨房の手順、焼き上がりから陳列するまでの流れ、接客の段取りなど、スタッフ全員がリアルな現場で一連の流れをリハーサルできたことで、問題点の洗い出しや改善ができ、自信もつきました。あのレセプションがあったおかげで、スタッフ一人ひとりがオープン初日に慌てることなく、落ち着いて対応できたかなと思っています。


― パンと器の調和についてはどのように提案されているのでしょうか?

店内には、パンを食べる時におすすめの器や雑貨などをセレクトしたコーナーがあります。

またパンのディスプレイに使っている器は、季節ごとの歳時やパンの種類に合わせて替えるなど、パンの個性に光を当てて、パンを引き立てられる器を心がけています。

パンを選ぶ時、スタッフにオーダーしていただくスタイルにも思い入れがあります。ご注文いただいたパンが一番すてきに見えるように、お好みのパンをスタッフがお皿に盛らせていただき、袋にお入れしてお渡しする瞬間まで、パンを丁寧に大切にお引渡ししたいという思いからです。


― パンをオーダーする時に、パンや器についての会話が弾みますね。

スタッフに声をかけていただく場面をつくることで、パンや器についての会話が生まれることは、私たちが楽しみにしていることでもあります。

パンや器を介してコミュニケーションが生まれ、お客さまと何気ない対話をすることで、昔ながらの八百屋や魚屋のように「私にとっての馴染みの店」というような、とっておき感をお客さまに感じてもらえたらうれしいです。


― 念願のパン屋さんをオープンし、今はどのようなお気持ちですか?

店に入る前のわくわく感、お店に入った時のパンの香りに包まれる幸福感、そしてもちろん食べた時に思わず顔がほころぶようなおいしさなど、訪れる方の気持ちが豊かになるような場所であり続けたいというのが今の願いです。

商業団地という立地柄、ふらりと通りすがりに立ち寄っていただくことは難しいと思います。だからこそ、わざわざ「フルール・フルール」のパンを目がけて来店していただけるような、魅力的なパンを作り続けたい。そしてキラキラと目を輝かせながらパンを選ぶお客さまの幸せな表情に元気をいただきながら、日々励んでいきたいと考えています。

ひと口食べて感動するパンで、
やきものの町に新しい人の流れを。

― パン屋さんになりたいと思っている方へメッセージをお願いします。

私は、加藤さんのパンに出会っていなかったら、パン屋さんを開こうなんて思いも寄らなかったはずです。

オープンしたら終わりではなく、定期的にお店を訪れてお店の様子やクオリティチェック、新作の相談などきめ細やかにフォローしていただき、心から感謝しています。

私たちは異業種からの参入でしたが、パンへの情熱にあふれるその道のプロに頼むことができて本当に良かったと思っています。


― これから、加藤さんとともにチャレンジしたいことはありますか?

加藤さんを中心に広がるつながりを大切にしたいという思いもあります。例えば1年に1回、加藤さんのイムズを受け継ぐラヴィデュレーヴのファミリー店で共通のフェアを開くなど、互いに切磋琢磨できたら良いですね。


― 今後はどのようなお店にしていきたいですか?

今はラヴィデュパンの系列店ということで、来店してくださるお客さまも多くいらっしゃいますし、とてもうれしく感じています。まずは加藤さんが築いてくださった土台を大事にしながら、そういうファンの方の期待を裏切らないクオリティを維持していくことがミッションです。

私がラヴィデュレーヴのパンをはじめて口にした時のような、ひと口食べて感動するパンをお届けしたいと思っています。

そしていつか「フルール・フルール」らしさをプラスしながら、「フルール・フルール」という看板をめざしてお越しいただくお客さまが増えることが願いです。そういった新しい人の流れが生まれることで、やきものの町、ひいてはやきもの文化を盛り上げることにもつながるとうれしいですね。

Shop Infomation

店舗情報

フルール・フルール FLEURS FLEURS

食パン、クロワッサン、バゲットという、パン屋にとって三種の神器のような定番アイテムを中心に構成。看板商品である土岐食パンは国産小麦100%で、お餅のようなもちもち食感と小麦の芳醇な香りが印象的です。正午以降に焼き上がり、数量限定で売り切れる日も多いとか。デコレーションされているパンと器のマッチングなど、日々の暮らしを豊かにするヒントがいっぱいです。

岐阜県土岐市泉北山町6-1織部ヒルズ
tel 070-5442-2678
時間 11:00~17:00(なくなり次第終了)
定休日 火~木曜(祝日は営業)、ほか不定休あり
Instagram @fleursfleurs_bakery

食パン、クロワッサン、バゲットという、パン屋にとって三種の神器のような定番アイテムを中心に構成。看板商品である土岐食パンは国産小麦100%で、お餅のようなもちもち食感と小麦の芳醇な香りが印象的です。正午以降に焼き上がり、数量限定で売り切れる日も多いとか。デコレーションされているパンと器のマッチングなど、日々の暮らしを豊かにするヒントがいっぱいです。

岐阜県土岐市泉北山町6-1織部ヒルズ
tel070-5442-2678
時間11:00~17:00(なくなり次第終了)
定休日火~木曜(祝日は営業)、ほか不定休あり
Instagram @fleursfleurs_bakery